9・11と、私。 そして、第58回平和美術展のお知らせ。
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同時多発テロ事件が起きてから、今日で9年経ちます。ニューヨークの世界貿易センタービルでは、2752人が亡くなりました。その跡地のグラウンド・ゼロ近くで行われる追悼式典が行われています。跡地の再開発工事も着工し、市民はその竣工を待ち望んでいるようです。

その報復として、アフガニスタンやイラクを攻撃したブッシュ政権、イラク戦争は不当だと主張するオバマ大統領に代わっても、不況で財政難の中でも軍事費は削られず、2009年オバマ政権発足時、アフガニスタンにいた米軍は3万5千人だったのが、現在約10万人います。

アフガニスタンでは、ガルザイ政権下で復興援助として誘致された企業は、ガルザイ大統領一族と癒着し腐敗していく一方で、米軍の脅威に危機を感じた反対勢力のタリバン側が戦闘力を強化し、国土の約5割を支配し、この9年間の間、数万人の民間人が犠牲になって亡くなっています。



もちろん、テロリスト行為は許されるものではありませんが、その報復行為も許されるものではありません。火のない所に煙は立たず、アラブ諸国やイスラム圏が欧米に対する憎悪は、イスラム過激派が出来る以前から歴史的に内在する問題であり、帝国主義時代の列強の支配から、第一次世界大戦後のイスラエル建国、第1次~4次にわたる中東戦争、湾岸戦争へと、欧米に対する復讐心が育てられています。

報復が報復を呼ぶ、これは私達人間が誰でも内在する「相手の人権を否定し差別する心」「やられたらやりかえせ」という深層心理でもあります。同時多発テロ事件のニューヨークに住んでいた坂本龍一氏さえ、その著書「反定義」の中で、辺見庸氏に「私だって、自分の子供が殺されたら、自分の命を投げ捨ててでも、殺した相手に復讐してやろうって、思いますよ。」と語っています。

このブログを書いている私だって、無意識のうちに人を差別し、攻撃しすることで、自分のアイデンティティを保とうとする攻撃性は、持っています。「私は正しい」「私は差別なんかしていない」「悪い奴は許せない」と思い込み、自分と正面から向き合おうとしないのが一番の問題かも知れません。

「人権」という考え方は、「差別は悪いことです」という道徳的アプローチではなく、むしろ「知らず知らずのうちに差別している自分」に気付き、それを深層心理から意識の明るみに出すことで、「本当にそれでいいの?相手の人権を侵害していない?」と、自分に問いただし、相手の人権を侵害する行動を起こさないように注意する習慣を身につけることで、成立する概念であると思います。

戦争は、この「人権」という感覚を捨てさせ、人間を平気で殺せるようにします。今、連続ドラマでも話題になっている水木しげる氏も、「戦争は人を狂わせる」と、戦争漫画「敗走記」に、最後のメッセージとして残しているそうです。

人は、しばしば、自分の理解できない人を「許せない」と考えます。誰かを「完全に理解しないと気が済まない」場合は、「相手を支配したい」という気持ちがあるからで、その気持ちが満たされないと、「許せない」という傲慢な気持ちに変ります。本当に優しい人は、「相手のことを良く理解してあげられる人」ではなく、「自分に理解できない相手という存在を許して受け容れられる人」なんだと思います。

私も20代のとき、9・11事件が起きる前、ヨルダン南部の町に少しの間だけ住んでいましたが、イスラム圏のものの考え方って、理解をするのが、とても難しいです。特に私の住んでいた町は、スンナ派が中心で、サダムフセインの肖像画がレストランに貼ってあったりしました。東洋でも西洋でもない価値観が多く存在し、なるべく受け容れるように努力しました。

しかし、英語が出来てもアラビア語が殆ど出来なかった私にとって、反米感情の強い町で生きていくのは、過酷な状況でした。でも、住んでいるヨルダン人やパレスチナ人は親切な人ばかりでした。イラク戦争が勃発した時は、その町でイラク戦争に抗議する暴動が起こり、警戒区域として指定され、米軍に包囲されました。「なんで、あんな平和だった町が!」と驚いたと同時に、悲しみの感情が湧いてきました。

米国政府にとって、アラブ諸国は、とても理解しづらい国なのだと思います。核査察の受入れを拒否したイラクを、「テロリスト」として、11万人の民間犠牲者を出し、人々の拠り所であるモスクまで破壊して、結局、核保有の事実はなかったわけで、これはアラブ諸国に、米国政府こそテロリストじゃないか、言われかねません。ブッシュ政権は、人づきあいの出来ない「大きな子供」だったのです。

軍事費を削らない米軍の日本国内の基地のメンテナンスに、「思いやり予算」として多額の税金を投与する日本国政府も、戦争に加担しているのと同じことです。財政難と言われた時代に、このような予算を減らさずに、民主党の代表選挙は、専ら景気対策で論争し、経済が良くなれば雇用も増えると、国民を騙し、低所得者に対する格差是正について、十分な政策も論議されていない、さらに当初の公約であった米軍基地の沖縄県負担については、話題にさえ出てこない、戦後の民主主義が未だに確立できない、なんとも情けない政党政治です。

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あ、話がそれました。そうそう、今日、書きたかったことは、平和美術展のことでした。「平和の壁に花一輪を」を合言葉に、第58回平和美術展が、9月18日(土)まで、横浜の赤レンガ倉庫で催されています。平和美術展は、美術家平和会議の主催で、朝鮮戦争さなかの1952年以来、平和を愛する美術家たちが思想・信条・流派の違いをこえて開いてきたものだそうで、今年は、上野の東京都美術館が改修のため、初めての横浜会場で、絵画、彫刻、写真、書、生け花など、222人の作品255点が展示されています。

私は、まだ見ていないけれど、なんとか来週、行こうかなーと思っています。

(今日のYouTube) undercooled / 坂本龍一
  ギターは、コーネリアスこと、小山田圭吾さんです。ちなみに、私と同じ年です。
by hide3190ymo | 2010-09-11 14:58 | 平和と国際連帯
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