港町純情オセロ 劇団 ☆ 新感線プロデュース公演 @ 赤坂ACTシアター
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昨日は、冷たい雨の降る夜でしたが、心暖まる芝居を観ました。「港町純情オセロ」。

隣の赤坂BRITZでは、TBS主催の「絆」プロジェクトのチャリティーコンサートだったようで、そちらは、SOLD OUTでしたが、こちらの芝居は、当日券が出ていました。5月3日で入場できたので、たぶん、5月5日なら入れると思います。

赤坂アクトの広場では、東北地方や茨城県の食料品やお酒等の地域の特産品の直売店などが出ていました。

演劇は見なければ意味がないので、ネタバレにならないと思っていますが、それが嫌な人はスルーしてください。

これは、シェイクスピアの「オセロ」を、劇団・円 出身の青木豪さんが日本語及び関西弁に翻訳し、いのうえひでのり氏が演出したもの。

芝居の最初のシーンは、赤坂アクトシアターの2階席が舞台から遠すぎて、売店でもオペラグラスを販売しているくらい遠かったのですが、芝居を見ているうちに、どんどん吸い込まれていき、舞台と客席の距離を感じなくなりました。

役者のオーバーアクション、舞台装置の大規模な展開、人を笑わすためには照明も音響も小道具も手段を選びません。とにかく「せわしない日常から離れて、楽しんでいってほしい。」というエンターテイメント優先の考え方が、いのうえひでのりの演出。

おそらく、原作のシェイクスピアは、相当の悲劇を描いたと思われますが、この芝居も、原作のストーリーどおり悲劇なんだけれど、後味が悪くないです。

テーマも、人間の嫉妬深さ、男女関係の想いの強さ、妄想から逃れない人間の弱さ、権力を持つほど不安感が強くなり悪い人間になってしまう人間の性、観客席の誰もが個人差こそあれ持っている「人類共通の生きにくさ」を描いていて、普通そういう悲劇を見ていると、自分とストーリーが重なって、観劇しながら、とてもつらい想いをしてしまいます。

そこで、演劇集団KャラメルBックスのような「美しい嘘」でショートカットしてまで、ハッピーエンドで終わらせるのでは、歯がゆくて仕様がないわけです。

それから、テーマを台詞にしてしまうほど、興ざめしてしまうことはない、という平田オリザ氏の口語演劇の理論もあるが、今回の芝居は思いっきりテーマを台詞にしてしまっているのに、それでも面白かった、それは何故でしょうか。(ちなみに平田オリザ芝居は好きなので誤解なく。)

あえて、台詞の中にテーマを入れちゃうことで、また、極端に表現することでそのテーマの重要性を小さい問題にして、人間の誰しもある性を笑い飛ばしてしまえばいいのです。だから「美しい嘘」をつかずに、人を楽しませることが出来るのです。

いくら人間が出世して悪になろうとも、あそこまで悪にはならないだろうし、いくら人間に妄想壁があるとしても、あそこまで妄想して突っ走る奴は、そんなにいないはず。少なくとも、人間の嫉妬心を利用した裏切り行為があそこまで順調に進むはずがない。少なくとも、私の生きている日常では、そこまで悲惨にはならない、つまり、人間の悲しい性を「笑い飛ばす」ことが出来るというのは、心にブレーキがある健康な証拠なのです。

でも、どこかで心のブレーキが効かないと、秋葉原連続殺人事件やオウム地下鉄サリン事件のような悲劇を生む、これは、性善説でも、性悪説でもなく、性弱説であり、皆、人間が弱いことを知っているからこそ、誰もがそんな事件を起こすに至らないわけです。

チャップリンが追及した「笑い」の重要性は、ヒットラーの役を滑稽に演じることで、「自由に笑える社会こそ健全だ」という点にあるのだと思います。

また、どんな重たいシーンにも、ギャグがあり、歌もあれば、踊りもあります。音楽も挿入歌もアクションも良かったです。ただ、敢えて難を言えばアクションの身体能力の高さでは、劇団スーパーエキセントリック・シアターの域までは至っていないかも知れません。

でも、おちゃらけた芝居の中にも、オセロの妻となった女性の旦那を理解してあげるひたむきな気持ちを打ち明けたシーンには、涙が流れました。そして、最後には、オセロをだました悪い奴がやられたシーンには、もう観客席は同情せずに「ざまあみろ!」と皆、快感を覚えたことでしょう。

普通の人間関係のトラブルは、どちらが一方的が悪い、ということは、99%あり得ないわけですが、もうあの芝居では、誰がどう見ても、あいつは悪い、だけれど、そういう極悪人の演技ができる役者って、かっこいい!わけです。

役者別に言えば、あの横浜から来てオカマのヤクザの役をやった俳優と、シオミの妻の役を演じた女優さんが良かったです。彼らが入った瞬間、その空間の雰囲気が変わります。いわゆる「美味しいところを持っていくタイプ」、そういう役者、好きだなぁ。

今回は、18:00開演で21:30終演という長丁場だったけれど、どのシーンも変化に富んでいて、全く飽きない芝居でした。

2箇所ほど、台詞のミスだと思われる場面もありましたが、そこも上手にハプニングをフォローしているのが、また、生の演劇の面白さです。

やっぱり、芝居で勇気をもらうのは、目の前で、その役柄として生きて、自分の責任で、そこに立って真剣に自分と向き合っている人がいるわけです。他のキャラクターを演じているときは、自分とも向き合わないと出来ないのです。

自分も昔、アマチュア演劇やっていたので、今は向精神薬を飲んでいるため、芝居が出来ませんが、ああ、もう1回、芝居がやりたいなぁ、と思うのです。



赤坂ACTシアター周辺の写真10枚です。
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by hide3190ymo | 2011-05-04 09:44 | 舞台&美術
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